■「沖縄集団自決論争」始末記《 3 》…大江健三郎の『 沖縄ノート』を読みながら…。
曽野綾子の『 ある神話の背景』が文藝春秋社の『 諸君!』に連載されたのに対して、大江健三郎の『 沖縄ノート』は、岩波書店発行の総合雑誌『 世界』に連載されたのではなかったろうか。つまり、大江健三郎と曽野綾子の「差異」と「対立」は、岩波書店と文藝春秋の「差異」と「対立」でもあった と言ってもいいだろう。それが、左翼論壇と右翼論壇を巻き込み、論争から裁判にまで発展拡大した理由でもあっただろうと思われる。当時、隆盛をきわめていた左翼論壇と左翼ジャーナリズムに対抗し、それらを打倒するべく創刊されたのが文藝春秋の『 諸君!』であり 、その目的にそった企画の一つが、曽野綾子の連載『 ある神話の背景』でもあったのかもしれない。