ベトナム戦争なんて知らないよ⑴
■ベトナム戦争なんて知らないよ(1)。
清水正日大芸術学部教授が、私の新刊『小説山川方夫伝』に触発されたらしく、ネットで、『山川方夫論』の連載を始めたらしいという話は聞いていたが、直接、覗いてみることはしなかった。自分の作品がダシに使われ 、自分の書いた文章が論じられるということは、嬉しいことに決まっているのだが、どこかに気恥しいものも感じるからだろう。見てみたいが見るのが怖いというアンビバレントな気分。しかし、今日、何の気なしに、スマホをいじっている時、そのことを思い出し 、覗いてみることにした。清水正さんとは、決して古い付き合いではなく、むしろ新しい付き合いと言った方がいいかもしれない。清水正は、私が学生だった頃から、よくその名前は知っていたが、直接 、話をするようになったのは、随分、後になってからである。私や清水正さんが 、大学生だった頃は、学園紛争やベトナム戦争の全盛期の頃だった。とりわけ、清水正のいた日大は、《東大闘争》とか《日大闘争》とか言われ、東大と並ぶ学園紛争の中心地だった。しかし、多くの学生が デモや学園紛争に夢中になっていた頃、政治や学生運動に背を向けて、ひたすら文学研究に、特にドストエフスキー研究に打ち込んでいたのが清水正だった。《政治の季節》だったにもかかわらず、文学研究や哲学研究に打ち込み、その道に邁進する。それは、私も同様だった。私は、学園紛争にもベトナム戦争にも興味なかった。小田実の《ベ平連》なんて言葉を聞くだけで、嫌だった。その頃、僕が夢中になっていたのは《大江健三郎》だった。