山崎行太郎公式ブログ『 毒蛇山荘日記』

哲学者=文芸評論家=山崎行太郎(yamazakikoutarou)の公式ブログです。山崎行太郎 ●哲学者、文藝評論家。●慶應義塾大学哲学科卒、同大学院修了。●東工大、埼玉大学教員を経て現職。●「三田文学」に発表した『小林秀雄とベルグソン』でデビューし、先輩批評家の江藤淳や柄谷行人に認めらlれ、文壇や論壇へ進出。●著書『 小林秀雄とベルグソン』『 小説三島由紀夫事件』『 保守論壇亡国論』『ネット右翼亡国論 』・・・●(緊急連絡) 070-9033-1268。 yama31517@yahoo.co.jp

■昨夜は蕨駅前の某居酒屋で呑み会だった。 京浜東北線に、蕨(わらび)という小さな駅と古い街がある。私は、その隣の街に住んでいるが、時々、気分転換も兼ねて、古い街並がひろがる蕨駅前あたりに出かける。そこに、焼き鳥のお美味しい店があり、かなり以前から「お気に入り」だ。焼き鳥と言っても、普通の「焼き鳥」ではない。「味噌だれ」とかいう独自のタレに漬けた焼き鳥を炭火で焼くというだけのことだが、.これが、ちょっと、変わっている。他では食べたことがない。独特の濃厚な味がする。先代の「オヤジ」の時代に、偶然、立ち寄った店

■昨夜は蕨駅前の某居酒屋で呑み会だった。
京浜東北線に、蕨(わらび)という小さな駅と古い街がある。私は、その隣の街に住んでいるが、時々、気分転換も兼ねて、古い街並がひろがる蕨駅前あたりに出かける。そこに、焼き鳥のお美味しい店があり、かなり以前から「お気に入り」だ。焼き鳥と言っても、普通の「焼き鳥」ではない。「味噌だれ」とかいう独自のタレに漬けた焼き鳥を炭火で焼くというだけのことだが、.これが、ちょっと、変わっている。他では食べたことがない。独特の濃厚な味がする。先代の「オヤジ」の時代に、偶然、立ち寄った店で、その「味噌だれ焼き鳥」に出会った。江戸時代の名残りを残したような「コ」の字型のカウンターがあり、その中で、オヤジが「苦虫を噛み潰したような・・・」無愛想な顔をして、パタパタと炭火をあおいでいる。煤で薄汚れた裸電球。ケムリがもうもうと立ちこめる店内の壁には、油で染めたような薄汚れた紙が貼ってあり、「レバ刺し〇〇円」とか「煮込み〇〇円」とか、料理の名前や値段などが書かれていた。無口だが、「政治漫談」好きの変わったオヤジだった。社会経験のとぼしい私は、怖くて、ほとんど口を聞いたこともなかった。黙って、オヤジのかなり鋭い政治漫談を聴きながら、黙々とビールを呑み、黙々と焼き鳥を食べ、終わると、勘定を払い、静かに年季の入ったガラス戸を開け、静かに店を後にするだけだった。私は、食通でも美食家でもグルメでもない。自分で食べて、美味しいと思ったものを、腹一杯食べるだけだ。さて、何年か通っているうちに、ある日、その店に立ち寄ると、店が閉まっていた。オヤジが体調を崩したらしい。それから一年もたたないうちに、店は、本格的な閉店になった。オヤジが、胃癌かなんかで亡くなったらしい。

ここまで書いているうちに、私の記憶違い、勘違いに気ずいた。私は、何故、オヤジが体調を崩したとか、亡くなったとかいう情報を、友人もいないのに、知っているのだろう。それで思い出した。店は、オヤジの娘と娘婿が、途中から引き継ぐことになったようだった。娘婿は、勤めていた会社を辞め、焼き鳥屋の二代目になっていた。私は、この若い二代目から、オヤジが体調を崩したことや、一年後に亡くなったことを聞いたのだった。「本格的な閉店」というのは、私の記憶違いだった。店は、コロナ禍で、一時はテイクアウトのみだったようだが、今でも変わりなく営業している。

実は、昨夜は、蕨駅の近くに住んでいる『維新と興亜』編集長(坪内さん)、副編集長(小野さん)の三人で、その焼き鳥屋で呑み会をやろうと思って、店の前までいったのだが、閉まっていた。張り紙があったので見てみると、最近は、コロナの影響もあり、月水金だけの営業のようだった。きのうは午後五時から、『維新と興亜』の「維新をぶっ潰せ」「橋下徹よ、お前こそ詐欺師だ」とかいう特集企画で、インタビュー取材を受けたのだった。それが一段落したので、さー、呑みに行こうというわけで、焼き鳥屋を目指したというわけだったのだが、目印の「大きな赤提灯」が消えていた。仕方なく、もう一軒の居酒屋へ。ここもよく行く居酒屋だが、最近、経営者が代わり、だいぶ若者向けの店になったようで、少し落ち着かない。しかし 、遅れて来た小野さんも合流し、楽しい呑み会が出来た。「くたばれ維新!!!」「くたばれ橋下徹!!!」「橋下徹よ、お前こそ詐欺師だ!!!」・・・で盛り上がったことは言うまでもない。