山崎行太郎公式ブログ『 毒蛇山荘日記』

哲学者=文芸評論家=山崎行太郎(yamazakikoutarou)の公式ブログです。山崎行太郎 ●哲学者、文藝評論家。●慶應義塾大学哲学科卒、同大学院修了。●東工大、埼玉大学教員を経て現職。●「三田文学」に発表した『小林秀雄とベルグソン』でデビューし、先輩批評家の江藤淳や柄谷行人に認めらlれ、文壇や論壇へ進出。●著書『 小林秀雄とベルグソン』『 小説三島由紀夫事件』『 保守論壇亡国論』『ネット右翼亡国論 』・・・●(緊急連絡) 070-9033-1268。 yama31517@yahoo.co.jp

■柄谷行人の新作『力と交換様式』について(3) 柄谷行人は、人類の社会構成体の歴史を、《 交換様式A 》《 交換様式B 》《 交換様式C 》《 交換様式D 》と言って、説明してにいる。それが 、『 世界史の構造』から『力と交換様式』にいたる最近の柄谷理論のキーワードである。したがって、まず ここから説明しよう。まず《 交換様式A 》について。これは未開社会 、あるいは原始社会の交換様式である。この社会では、具体的に言うと、《 互酬交換》が行われている。この《 互酬性 》の段階では 、交換はほぼ平等に行

柄谷行人の新作『力と交換様式』について(3)

柄谷行人は、人類の社会構成体の歴史を、《 交換様式A 》《 交換様式B 》《 交換様式C 》《 交換様式D 》と言って、説明してにいる。それが 、『 世界史の構造』から『力と交換様式』にいたる最近の柄谷理論のキーワードである。したがって、まず ここから説明しよう。まず《 交換様式A 》について。これは未開社会 、あるいは原始社会の交換様式である。この社会では、具体的に言うと、《 互酬交換》が行われている。この《 互酬性 》の段階では 、交換はほぼ平等に行われ、あまり貧富の差や身分の差などは発生しない。富を独占的に所有するような権力者や支配者も、存在しない。したがって国家も国境も存在しない。さて、つぎに《 交換様式B》は、《 贈与と収奪》という交換が行われている社会の段階である。この段階で、富の独占や権力者、支配者が発生し、王様と奴隷というような身分社会、階級分裂なども発生する。この《 交換C 》の時代は 、国家主義植民地主義の時代であり、帝国主義の時代でもあった。そして 、それに続くのが 、現代の資本主義時代、っまり《 交換様式C 》の時代である 。この時代の交換様式は《商品交換 》の時代ということが出来る。

(続く)
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『力と交換様式』目次

序論 
  1 上部構造の観念的な「力」
  2 「力」に敗れたマルクス主義
  3 交換様式から来る「力」
  4 資本制経済の中の「精神」の活動
  5 交換の「力」とフェティッシュ(物神)
  6 交換の起源
  7 フェティシズム偶像崇拝
  8 エンゲルスの『ドイツ農民戦争』と社会主義の科学
  9 交換と「交通」

第一部 交換から来る「力」
 予備的考察 力とは何か
  1 見知らぬ者同士の交換
  2 自然の遠隔的な「力」
  3 「見えざる手」と進化論
  4 貨幣の「力」
  5 定住化と交換の問題
  6 共同体の拡大と交換様式
 第一章 交換様式Aと力
  1 贈与の力
  2 モースの視点
  3 原始的な遊動民と定住化
  4 トーテミズムと交換
  5 後期フロイト
  6 共同体の超自我
  7 反復強迫的な「力」 
 第二章 交換様式Bと力
  1 ホッブズの契約
  2 商品たちの「社会契約」
  3 首長制社会
  4 原始社会の段階と交換様式
  5 首長が王となる時
  6 カリスマ的支配
  7 歴史の「自然実験」
  8 臣民と官僚制
  9 国家をもたらす「力」
 第三章 交換様式Cと力
  1 貨幣と国家
  2 遠隔地交易
  3 帝国の「力」
  4 帝国の法
  5 世界帝国と超越的な神
  6 交換様式と神観念
  7 世界宗教と普遍宗教
 第四章 交換様式Dと力
  1 原遊動性への回帰
  2 普遍宗教的な運動と預言者
  3 ゾロアスター
  4 モーセ
  5 イスラエル預言者
  6 イエス
  7 ソクラテス
  8 中国の諸子百家
  9 ブッダ

第二部 世界史の構造と「力」
 第一章 ギリシア・ローマ(古典古代)
  1 ギリシア芸術の模範性と回帰する「力」
  2 亜周辺のギリシアの“未開性”
  3 ギリシアの「氏族社会の民主主義」
  4 キリスト教の国教化と『神の国
  5 悲惨な歴史過程の末の到来
 第二章 封建制(ゲルマン)
  1 アジア的なあるいは古典古代的な共同体との違い
  2 ゲルマン社会の特性
  3 ゲルマン社会における都市
  4 修道院
  5 宗教改革
 第三章 絶対王政宗教改革
  1 王と都市(ブルジョア)との結託
  2 「王の奇蹟」
  3 臣民としての共同性
  4 近代資本主義(産業資本主義)
  5 常備軍と産業労働者の規律
  6 国家の監視
  7 新都市

第三部 資本主義の科学
 第一章 経済学批判
  1 貨幣や資本という「幽霊」
  2 一八四八年革命と皇帝の下での「社会主義
  3 「物神の現象学」としての『資本論
  4 交換に由来する「力」
  5 マルクスホッブズ
  6 株式会社
  7 イギリスのヘゲモニー
 第二章 資本=ネーション=国家
  1 容易に死滅しない国家
  2 カントの「平和連合」
  3 自然の「隠微な計画」
  4 帝国主義戦争とネーション
  5 交換様式から見た資本主義
  6 資本の自己増殖を可能にする絶え間ない「差異化」
  7 新古典派の「科学」
 第三章 資本主義の終わり
  1 革命運動とマルクス主義
  2 十月革命の帰結
  3 二〇世紀の世界資本主義
  4 新自由主義という名の「新帝国主義
  5 ポスト資本主義、ポスト社会主義
  6 晩年のマルクスエンゲルスの仕事
  7 環境危機と「交通」における「力」

第四部 社会主義の科学
 第一章 社会主義の科学1
  1 資本主義の科学
  2 『ユートピア』とプロレタリアの問題
  3 羊と貨幣
  4 共同所有
  5 「科学的社会主義」の終わり
  6 ザスーリチへの返事
  7 「一国」革命
  8 氏族社会における諸個人の自由
  9 私的所有と個人的所有
 第二章 社会主義の科学2
  1 エンゲルス再考
  2 一八四八年革命挫折後の『ドイツ農民戦争
  3 一五二五年の「階級闘争
  4 原始キリスト教に関する研究
  5 共産主義を交換様式から見る
 第三章 社会主義の科学3
  1 物神化と物象化
  2 カウツキーとブロッホ
  3 ブロッホの「希望」とキルケゴールの「反復」
  4 ベンヤミンの「神的暴力」
  5 無意識と未意識
  6 アルカイックな社会の“高次元での回復”
  7 交換様式Dという問題
  8 交換様式Aに依拠する対抗運動の限界
  9 危機におけるDの到来
 

あとがき

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著者略歴
柄谷行人(からたに こうじん)
1941年生。思想家。
著書に『定本日本近代文学の起源』『トランスクリティーク―カントとマルクス』『世界史の構造』『哲学の起源』(以上、岩波現代文庫)、『世界共和国へ』『憲法の無意識』『世界史の実験』(以上、岩波新書)、『定本 柄谷行人集』(全5巻)、『定本 柄谷行人文学論集』(以上、岩波書店)、『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社)ほか多数。
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