山崎行太郎公式ブログ『 毒蛇山荘日記』

哲学者=文芸評論家=山崎行太郎(yamazakikoutarou)の公式ブログです。山崎行太郎 ●哲学者、文藝評論家。●慶應義塾大学哲学科卒、同大学院修了。●東工大、埼玉大学教員を経て現職。●「三田文学」に発表した『小林秀雄とベルグソン』でデビューし、先輩批評家の江藤淳や柄谷行人に認めらlれ、文壇や論壇へ進出。●著書『 小林秀雄とベルグソン』『 小説三島由紀夫事件』『 保守論壇亡国論』『ネット右翼亡国論 』・・・●(緊急連絡) 070-9033-1268。 yama31517@yahoo.co.jp

存在論としての漱石論(8) 私が、江藤淳を高く評価する根拠は、その「批評的思考力」の過激さである。何者をも恐れずに、誰彼、構わずに論争を仕掛けていき、完膚なきまでに論破していくその「攻撃力」と「破壊力」である。江藤淳が、あと先や、周辺の顔色をうかがいながら、その過激な批評的思考力を行使しているとは思えない。


存在論としての漱石論(8)

私が、江藤淳を高く評価する根拠は、その「批評的思考力」の過激さである。何者をも恐れずに、誰彼、構わずに論争を仕掛けていき、完膚なきまでに論破していくその「攻撃力」と「破壊力」である。江藤淳が、あと先や、周辺の顔色をうかがいながら、その過激な批評的思考力を行使しているとは思えない。「破れかぶれ」という言葉があるが、江藤淳の批評的思考力には、「破れかぶれ」という言葉が、相応しいように思われる。しかし、むろん、江藤淳の批評的思考力が、論理的、合理的でないわけではない。江藤淳の批評や論争は、破れかぶれの暴走のように見えるが、よく点検してみると、まったく逆である。精巧・緻密な論理と実証的なデータに裏打ちされた高度の議論を展開している。それは、デビュー作の『夏目漱石 』論から、「文芸評論」や「 占領研究」「無条件降伏論争」「戦後憲法論」・・・にいたるまで、一貫して、貫徹されている。
外部からは、水と油のようにしか見えないにも関わらず、吉本隆明江藤淳とが、面と向き合うや、たちまち「意気投合」し、対談を何回も繰り返し、『 吉本隆明 /江藤淳全対話』という文庫本まで、出した理由もそこにある。吉本隆明もまた、日本の近代思想史の中では、類を見ないような、過激な「批評的思考力」の持ち主だった。