山崎行太郎公式ブログ『 毒蛇山荘日記』

哲学者=文芸評論家=山崎行太郎(yamazakikoutarou)の公式ブログです。山崎行太郎 ●哲学者、文藝評論家。●慶應義塾大学哲学科卒、同大学院修了。●東工大、埼玉大学教員を経て現職。●「三田文学」に発表した『小林秀雄とベルグソン』でデビューし、先輩批評家の江藤淳や柄谷行人に認めらlれ、文壇や論壇へ進出。●著書『 小林秀雄とベルグソン』『 小説三島由紀夫事件』『 保守論壇亡国論』『ネット右翼亡国論 』・・・●(緊急連絡) 070-9033-1268。 yama31517@yahoo.co.jp

⬛️江藤淳『戦後と私』を読む(2). 江藤淳は『戦後と私』 で、《 故郷 》や《父》や《家》について、語りはじめている。《 故郷 》や《 父》や《 家》・・・。もっとも江藤淳に相応しくない事柄のように見える。特に、自分の《 故郷 》や《 父》や《 家》・・・。それまで、江藤淳が書いてきた「夏目漱石」も「小林秀雄」も、ともに《 東京生まれ 》で、《 故郷 》に縁のない文学者だった。小林秀雄には『故郷を失った文学』というエッセイさえある。もちろん江藤淳自身も《 東京生まれ 》である。江藤淳の批評的基

⬛️江藤淳『戦後と私』を読む(2).

江藤淳は『戦後と私』 で、《 故郷 》や《父》や《家》について、語りはじめている。《 故郷 》や《 父》や《 家》・・・。もっとも江藤淳に相応しくない事柄のように見える。特に、自分の《 故郷 》や《 父》や《 家》・・・。それまで、江藤淳が書いてきた「夏目漱石」も「小林秀雄」も、ともに《 東京生まれ 》で、《 故郷 》に縁のない文学者だった。小林秀雄には『故郷を失った文学』というエッセイさえある。もちろん江藤淳自身も《 東京生まれ 》である。江藤淳の批評的基準では、《 故郷 》や《 父》や《 家》・・・を安易に語りたがる《田舎者 》の文学は、つまり《地方出身者 》の甘ったれた感傷的な文学は、否定すべき文学だった。しかし、その江藤淳が、自分の《父 》について、感傷的に語り始めている。『 戦後と私』の冒頭は、こうなっている。

《このあいだ久しぶりで父からもらった葉書に、二十数年ぶりで、コースに出たら少しも当たらなかった、と書いてあった。 》

この当時、ゴルフというものが、一般庶民の間で、どれほど普及していたものか、知る由もないが、おそらくx、江藤淳が、父を語るのにゴルフの話から書き始めたことには、それなりの意図があったと覆われる。