私は政治家や軍人の話が嫌いだ。しばしば、自己弁解や自慢話、あるいは受け売りや知ったかぶりの話が多すぎるからだ。政治家や軍人には、言葉はいらない。ただ実行あるのみ、そして問われるのは結果のみだ、と思う。私は、多くを語らず、潔く絞首刑になった東條英機という軍人が嫌いではない。その対極に石原莞爾がいる。石原莞爾は、軍事には珍しく言葉の多い軍人だった 。講演や著作なども 、少なくない。しかし、石原莞爾の言葉は、政治家や軍人の言葉とは違っていた。自己弁解や自慢話、あるいは受け売りや知ったかぶりの話が極端に少ない。石原莞爾の言葉は、思想家や哲学者の言葉に近かった。その意味で、石原莞爾の思想的位置は、東條英機のそれと、さほど遠くない。